月別アーカイブ: 2016年4月

コントロール

多くの高校生が憧れる「インターハイ」その予選が各地で始まりました。当たり前の話ですが、チャンスは3回しかありません。特に高3は最後のチャレンジ、失敗は許されないプレッシャーから過去にも「番狂わせ」を幾度もみてきました。

この春もきっといろんな「ドラマ」があるのかなあと思います。

自分にとってもインターハイ予選は特別な記憶が残っています。成績としてはシングルスは大した結果は残せず、ダブルスは高1の大会が県大会出場、高2は県大会ベスト4。インターハイ出場枠は県から2本、優勝か準優勝しないと出れません。ただ自分の中では「高2でベスト4なら来年はたぶん大丈夫、行けるんじゃね?」と自信というより過信が生まれたのを覚えています。

高3最後の大会、ここで自分とって忘れられない貴重な経験をすることになりました。

そのインターハイ予選の約半年前、高2の秋の大会がベスト8という結果に終わりました。当時のドローは前大会の成績が最優先で、この秋の大会の成績から高3のインターハイ予選は5番から8番手のグループに入れられ予選からスタートする事になったのです。また県大会に上がると2Rで第1シードとあたる厳しいドローとなりました。しかし出場するには、どこかのラウンドで上位シードを倒さなければならないので、まあ2Rでも準決勝でも同じ、今思えば開き直って戦うには絶好のドローだったかもしれません。

いざ大会が始まると「負けたらお終い」という極限状態の中に置かれた自分たちは、今までにない気合で予選をなんなくクリア。中には完全試合を含むほどの高い集中力をみせました。

さあ県大会です、やっとスタートラインに並ぶことが出来、これからが本当の勝負の始まりです。そこで 最も記憶に残っているのは、やはり2R、相手は予定通りの第1シード。結果は64 64で勝利、内容も1ブレーク、1ブレークと相手も含めて非常にしまったものでした。しかしこの「記憶に残る」の意味は実は勝利や内容ではなく、自分の中で今までに(この後も)感じた事のない不思議な感覚をこの試合中に覚えたからなのです。

それは試合中の事を「何も覚えていない」という不思議なものです。

普通は緊張したり、興奮したり、感動したりと「感情」があるはずなんですが、この試合に関してはそんな「感情」が一切ないのです。「勝ちたい」という「欲望」もなければ、「負けたらどうしよう」という「不安や恐怖」もない、只淡々とプレーをしていていたのです。

今思えば「無の境地」とはこの事なのかもしれません。

試合後もなにか不思議な気持ちで勝つには勝ったのですが全く嬉しくないのです。後日、グランドスラムで優勝したビリー・ジー・キングが「カウントも中身も全く覚えていないし、え?!勝ったの?って感じです」と試合後のインタビューでコメントした時に「これだ、一緒だ!」と思ったのをよく覚えています。まあインターハイ地区予選とグランドスラム決勝ではステージがあまりにも違いすぎますが、真剣勝負をしている舞台としては、同じなんじゃないかなあと思います(笑)

人間ですから当然「感情」があります。この感情は大きなエネルギーにもなれば時として決定的なブレーキにもなり得ります。よく平常心で戦えと言いますが、これは決して「感情を殺せとか無くせ」と言う事ではありません。「感情がブレーキになるから持たないようにしよう」では戦うエネルギーも失ってしまいます。

最も重要なのは「感情をコントロールする」と言う事だと思います。この忘れられない試合中の事を「嬉しくないとか感情がないとか只淡々とプレー」と表現しましたが、実は完璧に「感情コントロール」が出来たんじゃないかなと思います。

あれから「もう一度あの境地に達すればまた良い試合が出来るのでは?」と一生懸命トライするのですが、残念ながら二度とその境地に達する事は未だ出来ません…まあもともと「煩悩」のかたまりのような人間ですから仕方がないです、まだまだ修行が足りませんね(笑)

【名古屋テニススクール 茨木テニスクラブ】

カテゴリー: 未分類 | 投稿者楢木コーチ 12:11 | コメントをどうぞ

80%の過ごし方

大会を運営していると出場者の方とこんなやりとりが

「私の試合は何時頃はいりますか?」

「前の試合が終わり次第なのでなんとも言えないんですよ、…」

「う~ん、だいたいでいいのですが…」

「60と76では約倍時間がかわってくるので、すみません試合進行を気を付けて見ていて下さい…」

 

テニスの試合はなかなか時間が読めませのでうかつな事は言えないのです。大会を運営する時に大体平均的に1試合40分位を目安に考えることが多いですが、本部をしていて辛いのは、76や75の連続のコートもあれば、60や61ばかりでサクサク進むコートもあって試合進行に大差がついて運営が大変苦労する事ですね(笑)

今日はそんな苦労話ではなく、ゲームの「時間」についてちょっと触れようかと思います。

 

「インプレー」

 

いわゆるボールを打っている時間は一試合のうちどれくらいだと思いますか?

1試合で約40分かかる試合があったとします。

 

例えばラリーが8回から10回とけっこう長く続いたとすると、時間に直して約6秒から8秒程度。サービスエース、リターンミスなら2秒~3秒。ポイント間が20秒、チェンジエンドが90秒。そう考えると実はインプレーの時間は約20%あるかないかぐらいなのです。

40分の20%ですから約8分しかプレーしていません、ちょっと驚きの数字ではありませんか?

残りの32分間(80%)がポイント間やゲーム間となります。

もちろんインプレー中が最も大切ですが、この32分間の使い方が同じくらい大切と言えるでしょう。

この32分間も含めて試合と考える必要があるのです。

ゲームの流れ、相手の特徴や戦略、自分の精神面、戦略や対策、体力回復、などなどを考える時間は十分にあります。しかし、テニスはコーチや仲間からのアドバイスや作戦タイムは取れません、この時間も一人で過ごさなければならないのです。この貴重な時間の過ごし方を見直すことで試合の行方は大きく変わる可能性があると言う事です。

 

ポイント間の20秒を過ごすのに必ずやった方が良いポイントが3つほどあります。

1感情などをはき出しリセットする

2リラックスする(特にマイナスのイメージを引きずらない)

3次のポイントは何をすべきかをしっかりまとめる

こんな感じです。

例えば、相手のショットがまさかのイレギュラーで返球できないとしましょう

1「なんだあ!ムカつく!」

2「もうなんで俺ばっかり?ついてない…」

3「もう、あれ取ってりゃゲームだったのにぃ…」

これでは完全に気持ちを引きずって次のポイントに入っています。そんな入り方をするとまたつまらないミスをしてしまいだんだん苦しくなります。

それを

1 「ドンマイドンマイ、しゃあない(笑)」

2 「さあリラックスして、忘れよう」

3 「ここ大事なポイントだからまずはファースト入れて(リターンを確実に返して)あせらず相手の弱点のバックにボールを集め浅くなったら一気にネットに出よう」とこんな感じです。

まあ実際上手くいくかどうかは分かりませんが、前者はもともと些細なかすり傷だったものを自分から広げていって戦況を悪化させていき、後者はかすり傷をかすり傷で終わらせて自ら崩れていくことがかなり少ない事は事実でしょう。

 

昨日、東山でMUFGジュニアの大会があったので会場に行っていろんなゲームを見てきました。

非常に興味深かったのは、ショットだけを比較すると明らかに差のある試合。

当然ファーストセットは技術の高い選手が奪いましたが、セカンドに入ると徐々に戦況がかわり始めました。

ファーストを落とした選手が、セカンドに入ると「相手はどんなボールが嫌なのか」を見抜いたようにスローボールを入れたり、かと思えば突然攻め果敢にネットに出たりし始め、戸惑う相手は徐々にイージーエラーが多くなって行きました。明らかにファーストアップの選手の中に「やりにくい」雰囲気が生まれ始め、しきりに「嫌な顔」や「苛立ち」「がっくり」という仕草が多くなり「どんどんミスが早くなっていきます」

対戦相手はそんな様子をちゃんと観ていて自分からはつまらないミスはしません、淡々と試合を進めていきます。

相手はどんどん無理な攻めを繰り返します。

結果は逆転勝ち。

これが32分の過ごし方なんですね。

ゲームはショットのコンテストではありません。ショットは単なるツールにしか過ぎないのです。

もちろんツールのレベルが高いに越したことはありませんが、その試合中に飛躍的にレベルアップする事はないと言って良いでしょう。

だったら今の自分の持っている技術でどう倒すかを真剣に考えて試行錯誤しなければなりません。

その為の重要な時間なのです。

アニメ「ベイビーステップ」の主人公「エーちゃん」は実に相手の観察を見事に行い強者に向かって行き倒しています。

テニスは「強い」と「上手い」という表現をよくされますが、もう一つ加えるならばテニスを「よく知っている」があると思います。

テニスもスマホのゲームも一番使うのは「頭」

 

だからおもろいんですね。

【名古屋テニススクール 茨木テニスクラブ】

カテゴリー: 未分類 | 投稿者楢木コーチ 18:33 | コメントをどうぞ

のりつっこみ

日本水泳界のレジェンド北島康介のリオオリンピックへの夢が断たれました。

200m決勝、結果5位に終わり、電光掲示板に眼をやり、リオが決定した選手を祝福し、プールに一礼をして堂々と歩く姿になんだかいたく感動してしまいました。

その後、即インタビューに正直

「え、今?」って思っちゃいました。

20年以上オリンピックの事だけ考え、オリンピック中心の生活を送ってあらゆるものを犠牲にしてきた来てその夢が破れたばかりの選手が最初に心境を語る相手が、一度も会ったこともない赤の他人のインタビュアーでいったい何を話せと言うのだろうか。

自分なら「お前関係ないだろ?根掘り葉掘り聞くんじゃねえよっ!」って思ってしまいそうです。

でもそこはさすが北島選手、きちっと答えていました。

特に印象に残ったのは中学から指導をしてもらった平井コーチに対する想いや感謝の気持ちを語ったところです。

一人の選手をサポートする人間は沢山います。家族、所属チーム、チームメイト、企業、スポンサー、協会、などなど。

でも一番近くで常に一緒に戦っているのはコーチです。選手とコーチの信頼関係は絶対なるもので北島選手も自分がリオに行きたかったのは当然ですが、コメントの中に「平井コーチはいつものように『行って来い』と言って送り出してくれた。コーチと一緒にもう一度オリンピックに行きたかった」という部分がありましたが。この師弟関係はきっと素晴らしいんだろうなあと感じました。

彼ほどの選手になるとマスコミやら協会関係やらスポンサーやら後援会やら挨拶しなければならない人が山ほどいるのではないかと思います。きっと平井コーチの元へ行くのは一番最後になるでしょうね。

出会ってからずっと練習や試合の連続だったでしょうからきっと今までは話す内容はそんなことばかりだったと思います。

全ての戦いが終わってやっとその使命から解き放たれ、昨夜は二人で初めてゆっくり話すことが出来たんではないかなあと思います。

まあ男同士ですからお互いに「お疲れさん」ぐらいしか出てこないかも知れないですね(笑)

選手の引退はコーチにとっても本当に辛いことです。どうにも気持ちのやり場がないものです。職業柄どうしても平井コーチの心境が気になります。

昨日のレースを観ていてそこまで妄想してしまう自分に「お前こそ関係ないだろ?」ってのりつっこみを何度も入れてました(笑)

【名古屋テニススクール 茨木テニスクラブ】

カテゴリー: 未分類 | 投稿者楢木コーチ 13:22 | コメントをどうぞ