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多くの高校生が憧れる「インターハイ」その予選が各地で始まりました。当たり前の話ですが、チャンスは3回しかありません。特に高3は最後のチャレンジ、失敗は許されないプレッシャーから過去にも「番狂わせ」を幾度もみてきました。

この春もきっといろんな「ドラマ」があるのかなあと思います。

自分にとってもインターハイ予選は特別な記憶が残っています。成績としてはシングルスは大した結果は残せず、ダブルスは高1の大会が県大会出場、高2は県大会ベスト4。インターハイ出場枠は県から2本、優勝か準優勝しないと出れません。ただ自分の中では「高2でベスト4なら来年はたぶん大丈夫、行けるんじゃね?」と自信というより過信が生まれたのを覚えています。

高3最後の大会、ここで自分とって忘れられない貴重な経験をすることになりました。

そのインターハイ予選の約半年前、高2の秋の大会がベスト8という結果に終わりました。当時のドローは前大会の成績が最優先で、この秋の大会の成績から高3のインターハイ予選は5番から8番手のグループに入れられ予選からスタートする事になったのです。また県大会に上がると2Rで第1シードとあたる厳しいドローとなりました。しかし出場するには、どこかのラウンドで上位シードを倒さなければならないので、まあ2Rでも準決勝でも同じ、今思えば開き直って戦うには絶好のドローだったかもしれません。

いざ大会が始まると「負けたらお終い」という極限状態の中に置かれた自分たちは、今までにない気合で予選をなんなくクリア。中には完全試合を含むほどの高い集中力をみせました。

さあ県大会です、やっとスタートラインに並ぶことが出来、これからが本当の勝負の始まりです。そこで 最も記憶に残っているのは、やはり2R、相手は予定通りの第1シード。結果は64 64で勝利、内容も1ブレーク、1ブレークと相手も含めて非常にしまったものでした。しかしこの「記憶に残る」の意味は実は勝利や内容ではなく、自分の中で今までに(この後も)感じた事のない不思議な感覚をこの試合中に覚えたからなのです。

それは試合中の事を「何も覚えていない」という不思議なものです。

普通は緊張したり、興奮したり、感動したりと「感情」があるはずなんですが、この試合に関してはそんな「感情」が一切ないのです。「勝ちたい」という「欲望」もなければ、「負けたらどうしよう」という「不安や恐怖」もない、只淡々とプレーをしていていたのです。

今思えば「無の境地」とはこの事なのかもしれません。

試合後もなにか不思議な気持ちで勝つには勝ったのですが全く嬉しくないのです。後日、グランドスラムで優勝したビリー・ジー・キングが「カウントも中身も全く覚えていないし、え?!勝ったの?って感じです」と試合後のインタビューでコメントした時に「これだ、一緒だ!」と思ったのをよく覚えています。まあインターハイ地区予選とグランドスラム決勝ではステージがあまりにも違いすぎますが、真剣勝負をしている舞台としては、同じなんじゃないかなあと思います(笑)

人間ですから当然「感情」があります。この感情は大きなエネルギーにもなれば時として決定的なブレーキにもなり得ります。よく平常心で戦えと言いますが、これは決して「感情を殺せとか無くせ」と言う事ではありません。「感情がブレーキになるから持たないようにしよう」では戦うエネルギーも失ってしまいます。

最も重要なのは「感情をコントロールする」と言う事だと思います。この忘れられない試合中の事を「嬉しくないとか感情がないとか只淡々とプレー」と表現しましたが、実は完璧に「感情コントロール」が出来たんじゃないかなと思います。

あれから「もう一度あの境地に達すればまた良い試合が出来るのでは?」と一生懸命トライするのですが、残念ながら二度とその境地に達する事は未だ出来ません…まあもともと「煩悩」のかたまりのような人間ですから仕方がないです、まだまだ修行が足りませんね(笑)

【名古屋テニススクール 茨木テニスクラブ】

カテゴリー: 未分類 | 投稿者楢木コーチ 12:11 | コメントをどうぞ