時間は「奪う」か「稼ぐ」か

フレンチ、ウインブルドンと決勝をみて、その両方に駒を進めたジョコビッチは、片方は勝ち、片方では負けました。

ジョコビッチはポイントでは今年ずば抜けており、2位のフェデラーとは倍近い差があります。

数字で見るのはなんですが、ジョコビッチはプレースタイルもそうですが、いま究極に安定している選手。

このシーズンはクレーから芝生へ、プレーに差の出るサーフェスで勝負を続けながら、決勝まで出ている(オーストラリアンでも優勝ですからね)ってわけですから、その対応力は他の追随をゆるさないくらい素晴らしいものなのでしょう。

フレンチが終わった後の「テニスマガジン」に、R・ショーンボーン氏の記事が載っていました。
これからのシングルスのシーンは、こう変わっていく…という予測をされていました。

それは、ラリーをするお互いの距離が短くなる、つまり、コートの中に入ってのプレーば多くなる、というもの。

数年前からそのことは言われていて、ワタシもその記事を読んできました。

錦織がその筆頭を勤めるようなテニスをしていますね!
そして今年の、クレーシーズンの脅威とされてきました。
土のコートでも下がらずにプレーする、といういままでなかなか誰もできなかったプレーでマドリードを連覇し、フレンチでも地元ツォンガに敗れはしたものの、プレースタイルを貫き、大きな活躍をしました。

みているとワクワクする試合を、いつも錦織はしてくれます。

リスクを孕みながら、それでも果敢に攻めいる姿勢は、本当にかっこいいプレーですし、トップを目指すジュニア達にも、彼のプレースタイルを参考にする、有望な選手がこれからたくさん出てくるんじゃないでしょうか。

そして、去年のツアーファイナル準決勝の相手となったフェデラーも、錦織以上にベースラインから頑なに下がらず、そして錦織以上に積極的にネットを取る作戦を使って勝利しました。
その二人のプレーはまさに新時代のテニスを感じさせる、というものなのでしょう。ショーンボーン先生も彼らをその先駆者として考えられているのではないでしょうか。
去年の全米に象徴される、錦織の大ブレイクもあって、今年に入って当然マークが厳しくなってきています。

より早いプレーで圧倒しようとする錦織を、全豪ではワウリンカがストレートセットで撃破しました。高い軌道の、彼の特徴でもある重たいボールで錦織に攻撃的に無理をさせ、ミスをさせるような感じでした。

フレンチでのツォンガも、かなり下がってラリーをし、錦織は2セット目まで「自分を見失っていた」というほど攻撃させ、ミスを誘いました。3、4セットは錦織のペースで挽回を期待できる内容でしたが、ファイナルセットには精度の高いサーブと安定したラリーでキープを続け、「紙一重」という差でツォンガが勝利しましたね。

ウインブルドン決勝では、フェデラーはやはりベースラインからまったく下がらず、早いタイミングで先手を取ろうとしました。世界中でホントにフェデラーにしかできないんだろうなというコントロールで、ジョコビッチをコート上走らせますが、驚くほど深いカウンターで、フェデラーの攻撃を連続させないプレーで安定したキープを続けました。

ブレイクされると、ブレイクバックする、というフェデラーにとっても乗り切れないような流れの展開でもありましたが、要所ではジョコビッチがフェデラーの攻撃を丁寧に、確実にかわし、タイブレイクでフェデラーがとった以外にはセットを許しませんでした。
「新時代」を象徴する「下がらないプレー」は相手の時間を奪い、時間を奪われた相手は同時に「精度」を奪われます。
全速力で走りながら、細かいコントロールはできないものです。

普通、そうですよね。

そこに対抗した、ジョコビッチにしてもツォンガにしても、ワウリンカにしても、相手の奪いにくる時間をしっかり守って、幾重にも攻撃を仕掛けたい相手を走らせ、一の太刀、二の太刀とかわしながら自分の時間に持っていきます。

彼らの持っているのは、高い守備力は当然のことですが、共通している「もう一つの要素」は「遠くからでも効果のある大砲」を備えていることです。

ジョコビッチは、深さも角度もあるカウンター
ツォンガは、繋いでいると見せかけての矢のようなストレート
ワウリンカは、パワフルで重たいボールと、アングルにもストレートにも強打できるバックハンド

それだけじゃないのでしょうが、後ろからでも攻守を交代させるだけの力のあるショットを打ってこれることで、相手に連続のポイントを取らせなかったり、なにしろ「守り一辺倒」というテニスでない部分で相手にリスクを負わせます。
もっと早く仕留めないと、逆襲されるかも…というプレッシャーを相手に相当与えていることだと思います。
錦織やフェデラーをはじめとする、「新時代」のテニスが台頭するには、まだ時間がかかりそうな気がするんですが。。。

ただ、一時期あまり見なくなった感のある、ネットプレーを今年はすごくよく見ます。
クレーでも、マドリードで決勝を戦ったアンドゥハルも、スペイン育ちのクレーコートでのサーブ&ボレーヤーでした。

そういう意味では、また長いラリーを短くし、自分の側に優位を置きやすいようなプレースタイルはかなりの速度で発展して行っているのかもしれません。
偉そうなことを書いておいて、自分のプレーはどうなんでしょうか。

精度もないし、行き当たりばったりなプレーになるのは、自分よりも強い相手の方が多いからで、イメージしたような戦略通りになんか試合はできません。

性分としては、先に相手を振っていくようなショットを持ちたいし、機会さえあれば試しているのですが。。。

それよりも、守りができません。

深めを守るといっても、ボールに向かって斜めに走って打点を取れるようにしたいのですが、うまく追いついた形っぽく入っても、ショットが浅くなったり、遅くなったりして余計に踏み込まれてしまいます。

この辺が訓練するところなんでしょうね。

なかなか練習ができませんが。


カテゴリー: プロ選手オタク | 投稿者ナガキヤスヒロ 14:20 | コメントをどうぞ