日別アーカイブ: 2016年3月10日

ラケットとボールの簡単な関係

ショットの打ち方、というのは奥が深いものだと思いますし、打ち方は感覚的なものの要素が多く、上手な人の形をまねしただけではその人と同じテニスができるようになったりしません。

例えば、ストロークとボレーはこれからテニスを上達していこうとしているレベルの人には、違う感覚なんだ、というように説明して、ストロークの時は構え方はこう、引き方はこう、振り方はこう、と教えたうえで、ボレーとはこうで、ストロークとは違いますよ、という認識を持ってもらった方が教えやすい。

 

そう、教える方もその方がやりやすいんじゃないかと思います。

 

ただし、自分でもうほとんどのショットは問題なく打てる、という上級者の中では、もちろんストロークとボレーの形の違いは認識していて、それでもボールタッチの感覚はその人なりの一つの感覚なんだな、というところに行きつくものなんじゃないかとも思います。

ボールをパンチするように打つ人が、ボレーになると急にボールをなでるようになったり、ストロークでスピンぐりぐりの人がボレーではフラットしか打たない、なんてことはそんなにないんじゃないかってこと。

基礎技術はちゃんとあるので、ストロークとボレーではラケットの扱い方は違ってくるのは当然ですが、ボールをどう扱うか、という個人の感覚は個人のものでいいんだろうと思います。

他人の家の芝生は青く見えるもので、コントロールのいいプレーヤーはさらにスピードを求めているかもしれませんし、その逆もあるんだろうと思います。

コントロールできるスピードにその人のテニスのテンポや展開力なんかも混ざっているから、組み立てて決めるまでのシナリオが描けるんだと思いますし、それを急にスピードアップしたら、処理する脳みその方が間に合わなくて結局甘い球を送ってしまったりしますよね。

スピードのあるショットを打てる人は、一撃必殺の武器を持っているけど、不安定になりやすいからコントロールがほしくなると思いますが、丁寧に気を付けて打てばやっぱりスピードが落ちると思うんです。プロでないなら、そのどちらかに皆さんは少なからず欲求を持っているんじゃないかと思います。

コントロール性能を維持しながらスピードを上げる=ラリーのアベレージを上げる、ってことは、スイング自体の改革がないとできないことで、そのためにはスイングはどうやって構成されているかを知っておけばいい。

テイクバックは、打点までの時間の余裕です。しっかり取れるときは、きちっと打点に入る自信があると思います。そこが性急な動きをする人は、どんなに簡単なショットが来ても、焦って打っているような感じで、強打するために勢いをつけているような形になるので、その人がそうしているかどうかは別として、コントロールは再現性の低いものになりやすいと思います。

フォワードスイングは、ショットの勢いをつける要素を持っています。このスイングがすごく速いか、たっぷり距離をとれるなら、強く打てます。要するにテイクバックを大きく取って強く振れば、ショットは強くなるってことですが、打点から遠い位置のスイングスタートや、力任せの速いスイングは打点を狂わせやすく、当たり損ねが多いとか、無論コントロールよく打つには訓練が必要です。

打点でのラケット面の向きが、ショットの飛んでいく高さとコースを支配しています。そこで決まった形ができるなら、それがまず再現性を上げるための要素ですから、そこにこだわるようになるのが初歩のうちの大事なことだと思います。

また、回転のかかる方向に関しては、スイング方向と面の方向の差異の大きさによります。下から上に大きく振って、面も同じように上向きなら、かなり大きなロブになるし、強く打ったらホームランですね。そのスイング方向で、面の向きを垂直にすれば、トップスピンがかかってボールはそんなに上に行かなくなります。上から下に振ってもいいし、体の内側から外側に向かってサイドスピンをかけるなんてこともできます。

深さのコントロールはおそらく一番むつかしいもので、スイングのフォロースルーで押し出せる感覚があれば、加減が利くようになると思います。そのためにグリップの方から振り出せ、と言われることになります。ヘッドを返すようにして打つと、スピードが出るけど距離に収まらないとか、高さを急に変えることがむつかしいショットになります。

例えば、ボレー対ストロークが普通にできる高さにショットを安定して打てるスイングとラケット面が作れるとして、そのプレーヤーは再現性もあるし、安定していて上手だといえると思います。

同じスイングで、ヘッドが高くなるとボールは下へ飛ぶようになり、インパクトでヘッドをより下げると、ボールをより高い軌道に持ち上げやすくなります。

飛んでいく(であろう)ボールの高さよりも、スイング軌道の方が高く終われるなら、「上がって落ちる」(=ドライブ系の)ショットになります。

下から上に振っているつもりでも、ボール軌道の方が上に行くことがあります。おそらく食い込まれて打点が後ろになったけれど面の向きを合わせてあまり上に行かないようにした、とかっていう場合。ボールは落ちづらくなっているので、スピードが出るとコートに収まらないかもしれません。

逆に、ボレーやスライスの時には、面をボールに当てて、スイングの方が下に行くようにすれば、ラケット面が負けたような格好にならなければならないほど、軽い力でボールがよく飛ぶようになります。

ジュニアなどでスライスを打つときにヘッドを下げて手首でこするようなショットを見かけますが、そんな風に力を抜いて、またボールが面を押す圧力を抜くような形になれば、ショットの勢いは失われて死んだようなボールになります。

スイングの形が悪いから、タイミングの取り方が悪いから、というのはどんな人でも違和感のあるスイングであることから見破れますが、要素を知っておけば、それの何が悪くてどんな症状が出やすいのかを知っておけば対策の練りようもあります。

コーチをしていてもそこいらへんが説明できないと、あいまいなことを言うようになり、生徒さんのクセばかりを見てよい面や改善されてきていることなどに気づかないでいるのはお互いに不幸なことだと思います。クセが悪いのではなく、それは生徒さんの独特のリズムであったり、動きやすい形であったりするかもしれませんから、それをある程度活かしつつできる要素を増やしていけば、一気に100点満点にならせるよりも徐々に上達の道を歩んでいる実感が持てていいのではないかと思います。

カテゴリー: 打ち方オタク | 投稿者ナガキヤスヒロ 09:35 | コメントをどうぞ