人にはそれぞれ動きのタイプがあるようで、「4スタンス理論」なんかを読むと、いくつかのタイプに分かれて得意な動き方がある、というようなものも紹介されています。
ワタシもそれを読みました。そんなに深く読めなかったのですが、動きのタイプ(姿勢や体の中での位置のタイプ分け)があるといっても、そうかといって苦手な動きができなければ相手としてはそこを突きたいと思うわけですね。だから人を見るときには非常に参考になりましたけど、だからと言ってこういうタイプの人はこういう動きは苦手だからあきらめて、とはレッスンで言えないなぁ…なんて思います。もうちょっと勉強しないといけないですね。
今週ブログの更新がいつもよりも多いのは、かける時間が多いから(笑)。息子の卒業式やら、申告やらで予定を入れず、外に出ずに家にいる時間を確保できているからなんですが、そうすると考え事もするわけです。
さて、今回は自分のテニスに合ったナニカを考えてみようという企画です。
冒頭にその人に合った動きがある、ということを書いたのもそこに行こうとしていたからにほかなりません。
その① 自分に合った『ラケット』は…?
ラケットを選ぶのは、テニスをこれから始める人には、なんでもいいんだろうなと思っています。もう30年近くコーチをやっていて、結局そう思うようになりました。
ただし、最初の出会いはその人のテニス観をそこで作ることになるので、最初に握ったラケットのタイプが、ずっと好きなラケットのタイプになっていくと思いますから、どうでもいいっていう考え方とはちょっと違います。
体格や運動能力などによってツアータイプのような昔からあるオーソドックスな薄めのビームのラケットがいい場合や、フレームの厚みや面の大きさがあって高反発なタイプがいい場合なんかもあると思います。だからいくつかのタイプのラケットをショップやスクールの試打用のラケットから借りてみて、上手な人に見てもらったり、自分で感じたりしてから自分のラケットを選べればいいと思います。
経験者の方が、新しいラケットを考えてみるときには、今使っているラケットで普通にスイングしてちゃんと打点が取れていれば、いつも通りのいい球が飛んでいく、という感覚があると思います。
それができる条件でなら、同じスイングをしてみて、ラケットを替えるとなにか影響があるかどうかを見てみればいいと思います。手のひらからフィードバックをもらいながら、普段のラケットよりも上に飛んでいきやすかったり、左右にぶれやすかったり、回転がかかったりそうでなかったりするような感覚的な部分があるかもしれません。
それが、フレームに張ってあるストリングスの硬さや種類である場合や、フレームの硬さ、面の大きさなどの違い、またはラケットのバランス(スイングウェイト)による場合などいろいろな条件が出てくると思います。
扱っているプレーヤー自身の手が、違和感を感じたり、期待と違うボールばかり飛んでいくなら、そのラケットはあっていないわけだし、何とも思わなければ合格圏内で、好きな異性ができた時のように気になって仕方ないラケットが現れたら、もうそのラケットがほしい証拠です。
見つからなかったら、その時は焦らずに少し待ちましょう。
ちなみにワタシの場合は、すでにかなり狭いストライクゾーンであることがわかっています。だからそんなに選ぶのに苦労はしませんが、お気に入りの一本が見つかるまでは相当な時間がかかったりします(笑)。
その② 自分に合った『グリップ』は…?
スイングする形はこれも人によって違います。したがって得意な打点の位置も変わります。そうすると、打点でラケット面ができ、インパクト付近で保持しやすい、グリップの握り方との相関関係があります。
苦手なショットがある人も、握り方を変えると急に振りやすく感じることがあります。その時にはその握り方とスイング方向には無理のない形が得られていることになります。
握りに慣れていなければ、面がどっちに向いているのかの感覚がわからなくなると思いますから、コントロールができなくなるのは当たり前のことです。いきなり「正しい握りが正しい結果を生む」のではなくて、ラケットの重さがストレスにならずに振り出せて、方向はわからないけどラケットにボールがよく当たる、なんていうのがわかったらもうけものです。
ラケットの動きは、握っている手の中に動きの支点ができて、スイングに合わせてヘッドがある程度回転したり、急に面を決めるために握りこんで止めるような動きがあります。その時に握りがあっていないと関節に負担がかかるので、面だけ感覚の上で向けておいて、適当に力を抜いて動きの勢いだけでボールを飛ばそうとすると、合わせ方だけがうまくなって本質的なコントロールにはなりません。握りの命題は個人にそれぞれあるもので、慣れることができれば何種類かの握りに自然に握り替えられるようになります。
握り替えは知識の下でやるのではなく、そのボールをねらった方に打つにはどう向けてボールにどう当てるのかがインパクトのイメージになる者ですから、ラケット面を作ることが先で、それを支える腕の形を作るのが握り替えです。
握り替えができない、何度もトライしたけどうまくできなかった、という人は、おそらく握り替えをすればすぐにコントロールが良くなると思っていたら、まったくできなくて悔しい思いをしたんだと思います。しかし、適切でない握りでも、強引でも曖昧でもラケットを向けることができたらそれでスイング方向が決まってしまうので、腕が覚えた動かし方と、握り方を変えた時に必要な腕の動かし方が合わなくなるために混乱するのです。その期間を乗り越えないといけないのですが、乗り越えてみればあっという間に何年も打てなかったレベルのショットが打てるようになるものです。
その③ 自分に合った『体の向き』は…?
ラケットがボールを飛ばす感覚がわかって、握りとスイングが合う場所がわかって、それでなおかつ不安定になることがあります。ボールをよく見て、ラケットをうまく合わせたはずなのに、打ちづらい。
相手の打ったショットが、とりづらい位置に飛んできているんですね。そして、とりづらいリズムで飛んできている。
足にリズムがある者なんですが、上級者ほどみんなに合って、初心者ほどそういうことができる人が少ない。当たり前のことなんですが、どうやって動けばうまく打てるのかに慣れている人は、リズミカルに打点に入り、同時に形になっているものなんです。初心者の人はどうやって引けばいいのか、ラケットの向きはこれでいいのか、ボールをよく見ないと失敗する、ちゃんと狙いたいけどもうボールが来ちゃってて時間が足りない、なんていういろいろな要素と戦っています。
上手な人がシンプルに打てるのは、それだけ訓練しているから。それだけに問題のある動きだと矯正も大変になりますけど。凝り固まって矯正が無理に近いような人も上級クラスにいますし、すっと改善できてコーチとともに喜べる、なんて人もいます。その両者の差は、リズムとテンポです。
簡単に言えば、足がよく動く人は、大丈夫。初心者でも、例えばサッカーの経験のある人なんかはテニスを始めてやってもすっとうまくなる人が多いです。足でボールを扱うには、柔軟に状況に合わせて足の動きで対応しなければいけないので、自然なフットワークが適切な動きになりやすいんでしょうね。
打点ていうのは、一瞬のことですから、その瞬間にできるラケット面とか力の入れ方に着目しやすいものですが、ボールには飛んでくる方向と、飛んでいく方向、そのためにはスイングを入れていく方向が決まっていないと自信をもってスイングできるようにはなりません。
そうすると、ボールの位置へ行ってラケットを向けて振ればいいのではなくて、スイング方向に合ったラケット面を入れるために、肩の向きがある程度の範囲で決まっていなければ再現性のいいスイングになりません。動きの中でボールをとらえることが必要なスポーツですから、上半身だけでもできれば、何とかしちゃうこともできます。
狙った方向に打つには、ボールが飛んでくる方向に入り口の感覚を作って、そこから出ていく方向を決めやすいように自分の振り方に合った体の向きを作っておけるようにするといいです。
上手にボールが打てるのに、いつまでも初心者がやっている「ボールをよく見て打つ」だけではできることのレベルが上がりません。うまく返せるだけではなく、積極的なショットが打てるようになるには、自分がやるべきことは、打つ前にイメージしておけるようにならないとゆとりのあるフォームにはなりません。
その④ 自分に合った『ボールの見方』は…?
体の向きがわかったら、ボールをどのように迎え入れるか、姿勢の問題も出てきます。頭が下がる癖があると、体の軸が折れます。軸が折れれば、下半身の力を上半身に伝える回転運動がかなり損なわれます。
軸、ですから回転の中心が折れてしまうのですから、転びかけのコマのような動きになってしまうので、いいパフォーマンスにはなりません。
軸を追ってしまうのは、フットワークの問題もありますが、ボールを目で追ってしまうためにバウンド地点に顔ごと下を見てしまうということもあると思います。
とくに相手のショットが強烈だったり、足元近くに深々と飛んできたりすると、バウンド後の動きが目にも止まらない速さになるだろうことが想像できるので、必死にバウンドを目で追ってしまって腰が折れ、顔が下がります。そして手打ちになる。
手打ちでも面がしっかりして当たればしっかり返球はできます。(狙いなどは甘いかもしれませんが)手打ちでなおかつ軸が折れていると、面がぶれてショットが死ぬ可能性も高くなります。要するに当たり損ねをしやすいので、試合中なら万事休すですね。
バウンドは地面にボールが当たって跳ね返ることですから、そのあとはどうせ上向きにボールが跳ねるわけです。
だったら顔の位置は上に合って上がってくるボールを待ちましょう。ラケットが地面すれすれでないといけないのなら、後ろ足側の膝を落とせば届くようになります。
ゆっくりボールを掬い取るようなつもりで丁寧に合わせてやれば、スイングに乗って強くはなくても狙った軌道にボールを乗せやすくなります。これも、ボール感覚の話ですから、すぐにできるようになる人と、苦労しないといけない人に分かれます。センス?みたいなものですが、慣れれば大丈夫なので、できるようになる時間がかかる人とそうでない人の差ですから、なにしろ練習はしましょう。
ここいらへんの条件がそろってくると、その人なりの無理のないフォームが出来上がってきて、多少のことでは崩されなくなってきます。
テニススクールだったらそれで上級クラスのレベルになる要素を、「打ち方」の要素では持つことになります。
上のクラスに行くには、
いい球が打てること
いい球を返せること
再現性・連続性が高いこと
ゲームの要素(テニスコートと人のつかいかた)を知っていること
より上達意欲があること
などの条件が必要になると思いますから、ボールを打つのがうまいだけじゃダメでしょうけどね。