テニスキャンプを開催しました。
ジュニア向けの、ショット強化合宿in白子・・・というタイトルで小学生を対象に一泊二日、楽しい合宿でした。
何が楽しかったかって、子供たちのパワーの凄さですね!「仲良くなってほしいと思ってます」と言ったら数分もしないうちにクラスメートみたいになっちゃって、いま初めて会った学年の違う子供達とは思えませんでした。
いやー、ずっと笑かしてもらってました。。。
さて、今回はもともとの企画としてはスライスやボレーと、サーブの強化合宿というタイトルだったのですが、結果としては、やっぱりラリーの基本になるストロークもみっちりやっちゃったりしました。
時間があるというのは良いもので、段階的に慣れていくところを見ながら次のステップを用意できるところが、普段やっているレッスンよりも、今回初めて会う子供達でももともとどのくらいのスキルがあるのか、こうやってやらせてみたらどのくらいできるのかを見ながら進められたので、そういう意味ではやりがいがありました。
仲良くなれたので、どうしても基本スキルの方に目が行ってしまうのは、ワタシの生業では仕方のないことでしょう。でも色々と良いヒントを持ち帰ってもらえたのではなかったかと思います。
さて、タイトルにある、ジュニアにスライスを指導する、ということなんですが、いくつか心配な要素があります。
まずは、その是非について。
いまだに、小学生にスライスを禁じるスクールがあるようですが、ワタシはそこに一理あることを認めつつも、持論としては正しく教えることが必要で、小学生の間は使わないものだとするのには反対です。
というのも、昨年の全米でR・ビンチがセリーナを打ち負かしたのもペースのあるスライスを打てたからで、男子でもトップ選手はネットを取るのに有効な手段であったり、ラリーのペースを落ち着かせて自分の展開に持ち込みやすくしたりする重要なアイテムになりつつあります。
ということは、スライスのショットの役割は確実にあり、相手に攻めづらくさせる良い展開をつくれるショットであることが第一です。まずはそれを知ること。
悪い方向性のものとしては、動けば打ち込んでいけるようなシーンで、フットワークを怠って面だけ合わせて返すようなショットを覚えると、そこに頼ってフットワークのトレーニングをいい加減にやったり、ラリーの最中に注意力の落ちたようなダレた動きをするもとになりかねません。
スライスを「当てるだけ」とか「面をつくるだけ」で打つショットと勘違いするから(そうやって打つショットがアンダースピンになるから)スライスは悪者のように扱われるんじゃないかと思います。
第2には、ラケットの扱い方の問題
これは、あれこれを詰め込み過ぎてはいけないだろうという指導する側からの心配もあるかと思いますが、ラケットの扱い方をトップスピン型にし過ぎているのは指導者の過ちなのではないかと思います。
もちろん、自然な動き方をすればスイングは野球の打ち方のように横殴りというか、叩きつけるものになるかもしれません。それで不安定なショットになればなかなかラリーが出来るようにならないですが、うまくドライブ系の当て方とスライス系の当て方の両方を自然と知る方法が無いかと思います。
スイングの全体の長さを考えれば、場所によってはスライスが使いやすく表れる位置と、ドライブの面をつくれば安定するように現れる位置が違うだけで、同じ動きの中で、握りやそれによって変わる面の使い方さえわかればいいのです。
スライスは非常に正しく教えるということが難しく感じるショットで、その原因は多様性にあるということだと書いたことがあります。
ブロックのような形でもあるし、チップショットのような形でもあるし、パンチして鋭く飛ばすこともできるし、ドロップショットのように飛んでいかないショットに変えることもできる。
ただ、スライスをうまく使える人の感覚では、同じ入り方からの「ちょっとした工夫」でそれらをつかいわけている=一つの感覚の中の広い範囲がある、というのが出来ない人にとっては理解できないものみたいに感じるので、教える方は出来るけど、出来ない人に上手く教えるのがすごく難しいものなんです。
教わる人は「正解」を求めている可能性が高くて、それが出来れば満足すると思うのですが、そこで別の切り口からスライスはこんな風にもできるんだ、なんてやると混乱してしまうこともあると思います。
そこで、ボールがラケット面に当たって飛んでいく感覚だけで、打ち方として指導するというよりは、ボールの軌道を見せて、そうやって飛ばすにはこんな風に感じてみて下さい・・・という「当て方」を工夫する、というアプローチならどうか、ということかもなと思っています。
そうすればラケットの握りが厚いままではいろいろと器用にボールを扱うことが出来なくなるのが解り、基本の握りは薄く握っておけば色々なことができるようにすることでサーブやスマッシュなどへの対応が楽になると思いますし、ストロークは良く鍛えられているのだろうから、グリップチェンジして厚い握りにするのは問題ないんじゃないかと思います。
ボレーヤーでサーブが苦手、という人はあまり見たことがないです。身体から遠い位置でも面のコントロールが出来るような、グリップと面の感覚があるからだと思います。
サーブだって打点は高くて、言ってみれば体の中心からは遠い打点の一つですからね。
ストロークのスイングで飛ばすイメージだけではなくて、ボレーの面感覚で距離や軌道の高さをしっかりさせられるようになると思います。回転をかけることにだけ、サーブが入る感覚を持たせるのではなくて、この角度の手(面)をつくれば、だいたい入る、ということを約束にしなければ、スピードを上げていくときに障害になりかねません。
もう一つには、ショット自体の使い方が出てくると思います。
高いバウンドのボールに下がってムーンボールを合わせるだけでは埒が明かないと感じているジュニアプレーヤーは多いはずです。バウンドの高い位置に、背の低い選手が下から上にスイングを入れれば、スイング自体が上がりきったところでしかインパクト出来ないために思ったような軌道にボールを打てなくなります。
相手にそれ以上高いボールを使わせないためにライジングで合わせられるならスライスは高い位置で待ちやすいために打ち方としてのアドバンテージがあると思います。もっとも、そのタイミングで打つ勇気と慣れが必要だと思いますが。
また、低めの短いバウンドのボールを、攻められないようにコートの中に使い、そのあと思い切って相手を下がらせれば、相手の高いショットを短くするような、前後に振るような動かし方をすこし早いペースで出来るようになったり、自分が相手にこうやってプレーさせたい、という時間のコントロールが上手くいく要素を持っている可能性もあります。
しっかりスイングしなければいけないドライブよりも、面を合わせてシャープに速い球が打てるスライスは、使いようによってはストレートなどの狭い範囲にうまくコントロールできるアイテムかもしれません。
スイング自体が必要というよりも、もっと面の感覚が必要ですがスライスなら面を合わせて押し込むことでスイングはシンプルで良くなるために、どうしてもそっち方向に入れたいときなどはスライスは便利です。
戦い方の重要なアイテムとしてスライスは存在しているわけですね。
だから、早晩、ジュニアでもスライスは必須になるような時代に入ると思います。