日別アーカイブ: 2016年12月23日

初心者には薄いグリップが良いのか

自分で確認した(現地で研修を受けたとか)ってわけじゃないのでアレですけど、アメリカではテニスを教わるときに、最初にボレーからスタートするらしいですね。←これ、いつきいたのかなぁ、もう20年位前だと思います。

おそらく、フォアバックの両側の面を使うことを前提にしていることと、ラケットがボールを跳ね返す感覚の方が(いかにスイングすべきかより)大事なんだろうというところが理由なんだと思います。

日本では、フォアハンドストロークからですね。そのときに、「イースタンフォア」で握りを教えるわけですが、この理由を考えたことがあるでしょうか。

職業コーチの方だったら、ほとんどが知っていると思います。そこからの発展性があるから、という理由だそうです。ストローク用に厚く握るようにも、ボレーやサーブのために薄く握ることも、どちらにも対応が難しくないってことなんでしょう。

初心者には、横向きから体の回転動作を生かしてスイングしながらきちんと打つことが難しい、とするなら、その理由は理にかなっていると思います。

厚く握るほうが、強烈なストロークを身に着けやすいかもしれませんが、ボレーで苦労するかもしれません。

コンチネンタルは日本での言い方かもしれませんが「硬式テニスの基本」みたいな位置づけですね。

教本の中では明確にコンチネンタル、イースタン、セミウェスタン、(フル)ウェスタン・・・と腕とラケットのなす角を作る握りの事を分類しています。

しかし現実はもうちょっと細分化していて、この言い方がはたしてすべてを言いあらわしたり、表現したものなのかは怪しいと思っています。

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フェデラーはフォアの握り薄いっていうけど、これどうなの?イースタンではないですよね。。。手がでかいんだろうから、我々とちょっと違う部分も実はあります。(手がでかい割に、グリップサイズは3で、体格にしては細い)

それと、ヒールの位置がこの写真ではちゃんと見れませんけど、違います。ストロングイースタンとでも言いますか、薄い握りの自由度と、厚い握りの力強さの両面を持っているといってもいいのかもしれません。

 

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このくらいが薄いっていうかなぁと思います。スクールのコーチらしく、初心者に教えている握りで真横から撮っています。

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これだとセミウエスタンかなぁ。

フェデラーの画像は、これよりも人差し指と親指のV字の中心は薄めの位置で、ヒールはもっと厚めの位置に来ていて、インパクト前にヘッドがうまく下がって、遅れて出てくるようになっているような感じです。

上半身の形も、この実際には打っていない私の画像よりも、もうちょっと顔を残す(横向きの体の意識を残す)ことで、狙ったラインを外さないように「押し」を加えやすいようにしているんじゃないかと思います。

 

 

まあその話はいいとして、初心者にフォアハンドストロークを教える際に、イースタンフォアのグリップで教えるってことについて懐疑的な意見を述べてみようと思います。

先に言っておきますが、否定的な立場をとっているというほどのものではありません。もちろん良い面も悪い面もあるってことなので、悪い面を見るとどうなんだ、ということを知っておくのもよかろうと思っての記述です。

それぞれのグリップの厚さについては、得意不得意があるので、良い面悪い面というのはそういう事も含みます。

イースタンフォアは、なじみやすい握りであることには間違いありません。手のひらをラケット面に沿わせ、その面の感覚がグリップを通じてわかりやすくなるようにそのまま下ろしてきてグリップに合わせる、という説明も、とてもシンプルで感覚的に理解しやすい。

腕の振りは、振り子運動が出来れば、腕の長さ、イースタンで握ることによってできる腕とラケットのなす角までを考えれば(そんなに細かく考えなくても)ひざ上からベルトの高さくらいが打ちやすいボールの高さに設定されます。

初心者向けに近くから手でトスをするボール出しを打ってもらうには、バウンドをそこら辺の高さにするのは、ボールの規格上も理にかなっていると思います。

しかしですね。。。ラリーがベースライン同士になった際に、バウンドしたボールがベルトの高さくらいになるようにするのって、けっこう正確にボールの動きに合わせて動き回らなきゃいけないですよね。ましてラリーに不慣れなレベルでのボール軌道は高めでゆっくりなショットである方が繋がりやすいかもしれません。

まあイースタンで打ちやすいように私だったら高めの弾むボールを送らないようにラリーしたりしますが。初心者同士だとそういったコントロールは難しくなって打ち返しづらい打点からミスが早くなったりしがちです。

 

それと、振り子動作は安定するのはスイングがお腹の前を通るとき。すなわち横向きになった方がスイングは安定して、打点が発見できれば安定したコントロールのショットが打てるようになります。

だけど、相手のコートからショットが飛んできていて、自分もそっち(ネットの向こう)に打ち返そうとしていますから、慣れていないプレーヤーであるほど、ネットに対して正面向きでいたいものです。目をそっちに向けておける方が安心できる。

そっちから考えれば、正面向きからラケット面を相手のコートに向けて、それを持つとなる、厚いグリップになった方が跳ね返しやすい。

例として実際に、小さいジュニアに横向きになるスイングを教えて、うまくできないような子に、ラケットを縦にして相手のコートに向けさせて、高ーく弾むボールを球出しして、そのラケットで跳ね返してきな、っていうと、身体の余計な動きがないために簡単に照準を合わせて成功させてきます。(羽子板打ちみたいになるってこと)

手の形と、当たったボールがあっち側に返る、という都合がシンプルになるってことかもなぁと思います。かといって厚いグリップで教えるのが正解ってわけでもないでしょう。いずれ体は横向きにしてスイングの長さを確保しなければならないし、フォロースルーでコントロールの感覚を付けなければならないでしょう。

厚いグリップでももちろんできますから、ストロークに限っては近道と言えば近道だとも思います。

厚いグリップでの利点ももちろんありますね。例えば手首とラケットのなす角が大きくなりますから、グリップ側からスイングを出していって、ヘッドにパンチ力があるという力の入れ方(動作の順序)の正しい形を覚えやすいと思います。薄い握りだと体や腕などの大きな力を使って不器用な動きになってしまうより、手首や指先などの素早く力を入れたら反応しそうな部位に頼ってしまう傾向が強く出る場合があります。

それって、ボールの飛んでくる動きに馴染みがないために、目で追ってなるべくうまく追従したいような感じで普通に誰でも起こります。

厚いグリップでこそ、腕を前に突き出して壁のように面を使うことで、グリップ側が動きをリードして、運動の連結をうまく使えるような型にはめやすい面もあると思います。

厚いグリップで癖がついて、ボレーやサーブ、スマッシュ、あるいはバックハンドストロークへの握りかえがしづらくなるという側面も持っているかと思います。

だからなるべく早い段階でスライスも教えて、状況に合わせて判断させるような練習をしておかなければならないでしょう。

相手が打って来てから、自分の打点にボールが到達するまでに結構時間があり、その間に動きの判断や狙いの決定、自分の動作のイメージなどが慣れていくのが練習です。

バックハンドの握りが難しく感じて、フォアハンドよりも苦手なイメージを持ちやすいものですが、バックハンドはスライスでもいいわけです。

ボレーやスライスの要素を早い段階で知っておく−スイングよりもタッチでボールが飛ぶ感覚を知っておく−ということを、初心者にうまく教えてあげることができれば、フォームにさほどこだわらずにゲームを楽しめるようになるかもしれません。

薄い握りは手の届く範囲が返球範囲になること、切る動作をすることでフォアとバックの境界線が薄くなること、テイクバック時のラケットセットを高くすることでスライスとドライブの両方の準備になることなどを覚えられれば、やっと届いたようなラケットでも面の感覚があればネットの向こうには返せる、ということがわかります。

タッチでコントロールできるのが、最初は短い距離ということになるのなら、ショートコートでラリーやゲームができるようになると思います。

 

タッチにエネルギーを与えるのがスイングですから、ボレーよりもスライスのストロークの方がスイングの長さが必要になることの理由もわかります。いかに振るかが問題になるようではなく、いかにうまくタッチするかがスイングの目的になるのなら、打点に迷うようなこともすぐになくなるでしょう。

 

ここまでのことをまとめると、厚いフォアの握りと、それ以外ができる薄い握りの2種類を手の感覚に植え付ける、ということがコーチとしての使命かと。(大げさかな)

バックハンドのドライブをいかに打つか、ということがトピックスになってくるレベルになれば、腕とラケットを動かす方向に対して握りとは衝撃力を受け止める形のことですから(=正しい打点の形…だから人によっては多少の差があっても良い)、例えば左手を添えて両手打ちってことにしてもいいですし、

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こんな風に「面のないもの」で打つことをイメージして、このバットのどこにボールが当たることになるか、そのボールはどうやって飛んでいくかを理解できれば、そんなに握りかえは難しくないでしょう。

握りかえのできない人っていうのは、グリップチェンジの動作がわからないのではなくて、信頼できるフォアハンドの面感覚が変わってしまうのが恐ろしいからなんです。

だから、こういうイメージと、実際の成功体験を繰り返していくしか上達する道はないのと、その段階の途中であってもゲームを楽しみたいのならスライスという安心できるショットがある。

ドライブが打てるようになっても、スライスは便利なショットです。相手の攻撃をかわし、時間を作り、自分に有利な展開に持っていくことになったり、パワーよりも繊細さが必要な瞬間にとても打てると重宝します。

打点の範囲や、スイングのタイミングに対応できる幅が広く、腕をひねるような動作が入らなくても良いために使いやすい。強く打つと吹っ飛んでいってしまいそうなので、気持ちよく強打を叩き込めるようになるにはドライブを使えた方がいいので、スライス主体でテニスをすることを積極的に教えなくてもいいでしょうが。

 

そうすると、イースタン、という中途半端な握りの出てくるところがないような気もします。

 

実際には、フォアハンドは打てるようになったけどそのほかのショットがまだまだ、という成長の仕方をする人がほとんでしょうから、ここへ書いたような理想的な上達はしないものなんですが。

 

体の中に感覚ができないと、自信なんてつかないでしょうからね。

カテゴリー: 日記 | 投稿者ナガキヤスヒロ 23:12 | コメントをどうぞ