ラケットを引いて、ってのはほとんどショットの動作の最初の方なんですが、そこで「体を使う」ってことはどんなことか、わかりますか?
これね、説明すんのすっごいめんどいんです。だからちゃんとはしない。
どうしても複合した色々な部位の動きを追うことになるし、そのひとつひとつを言葉にしたからといって、一瞬でできてなきゃいけないことを丹念に言語化しただけで、できる人にとっては最初からできるけど、できない人にとってはなかなかできるようにならないままだと思うんです。
だってね、腕を引くのに脚の力は必要だし、その脚だって動くわけだし、ホントいえば腕って後ろに引くわけじゃないし、そこをなんでそうなのか、どうしたらいいのかを説明したらまた長くなるし、引き方は打ち方のメインじゃないけど大きな影響を与える部分だから、人によって違うことも認めなきゃなんない。
はー、めんどくさい。
でですね。ざっくり知っておいていただきたいことがいくつかあるんです。
最も大事なことは、
「フォワードスイングのためのスペースが開けられること」です。
そのためには、
「腕は高めにあげること」かな、と思います。
レディポジションの腕の形
から、「腕をあげること」と「腰と肩のターン」とで、極端にいえばこんな形にも。
ウルトラマンタロウの腕の形から、グルビスのテイクバックまでは、胸の前を通って広げるだけですから、実はそんなに遠くない。
前から後ろに向かって腕を引くようにしてこの形になったとしたら、そりゃあプロのラリーでは間に合わないでしょう。むすんで、ひらいて的なシンプルな形。
この手首の形がグルビスにとってはインパクトの面を作りやすくてこんな風にしたんでしょう。←ちなみにここ2年くらい彼のニュースも動画も見ないけど、どうしちゃってるんでしょうかね。
そうすっとこの形も
大して遠くないってわけで。
一般プレーヤーで、実はこのトッププロのように腰を深くターンすることができないことが多い。
まあ、必要ない深さかなぁとも思いますけど。すごい球が出るようになるかもしれませんけど、オーバーパワーしますね。
プロ選手の体幹の強さって、体幹部分だけにそのパワフルさって見えないものなんですが、一般人とは驚くほど違うものです。
両手で持った5キロのメディスンボールを、サービスラインからかなり後方から投げて、ワンバウンドで同じくらいの位置の相手に届きます。
いや無理だって。私も試しましたが、2キロでも無理でした。この意味がわかんない人は、まあいつまでもわかんないんだと思います。
きっと我々がそのくらい飛ばそうとしたら、無理矢理に体の方から引っ張って、軸はブレて腕が飛んでいきそうなくらい強く振っても、5キロのボールが重くてうまく出てこない、って感じでどうやって投げたものか…みたいな感じになると思いますが、体はきちんと中心になって腕は管理できる状態でボールを維持します。どういうことかっていえば下半身の強さと腹筋背筋のバランスも保って加速動作がボールに伝わります。で、5キロがやく15メートル飛んでいくわけですね。
物が飛んで行く場合に、そのパワーとは動作の量ですから、腕が長くなるわけはないので、ターンした際に腕が大きく引き上げられて、落ちて行く加速にさらに体からの加速が乗せられるわけですね。スイングの量が確保されて、そのパワーがボールに乗ることになります。
テニスコート上でラケットでボールを打つわけですが、パワーを求めて思いっきり打ったらアウトしちゃうってことは、普通に考えれば当たり前のことですね。
普通、強く打つという意識でスイングをすれば、インパクト付近に力を込めることになります。そうすると、その結果はインパクト後のスイングが強く大きくなることになるんですが、それがアウトする原因。
そっちのスイングがでかくなるってことが、飛んで行くモノの「飛距離」に対するパワーが出たってことになるんですね。
で、それでも入れたいもんですからスピンかけたりとか、肘を逃すようなウィップショットみたいな感じにして、ボールを殺すようにしてスピードが落ちていきます。スイングを強くしたという満足感と、スピンやスイングの形を変えるなどのテクニックを使ったという満足感なんかで、レベルの低い球に変えたということは忘れます。
偉そうに言っていますが、私自身がそうやっています。そうしないとコートの中に収まらないし、ゲームの相手がビビらない。ましてブレないスイングを落ち着いてできるような鍛え方もしていないし、メンタルだってそういうレベルのショットを連続で叩き込めるほど強くないものです。
だけどまあ、スイングビルダーとしての説明としては、なぜプロ選手だったらあんな150キロとかスピードのあるフォアハンドをコートに入れられるんだろうってことですね。
150キロ出るのもすごい(デルポトロとかモンフィスには190キロの記録もあります)ですが、それが23.77mしかないコートの長さで入ってくるってのがわかんないですよね。
理屈からいえば、テイクバックを大きくとることが、フォワードスイングの長さになり、それがイコール打球のパワーだってことがまず一つ。
それと、飛距離はインパクト付近のスイングの長さですから、なるべく普通通りに振り終わることで、いつも入れている距離で収まるっていうことが要素になります。
簡単にいえば、後ろがでかくて前が狭いスイングをするってことですね。
しかしスピンとかかけないと面の維持ができないじゃないですか。だから技術的にも相当すごいことなんだと思います。
腕よりも体、体幹の方が力がつよいってのが普通のことだと思います。それと、物理的に考えて体が回転することで腕の振りが引き出されてくるわけですが、力一杯スイングしようとすれば、体は必要以上に回そうとするはずなんです。
体の方が腕の振りよりも回転半径が小さいものですから、あっという間に打点の位置まで到達します。だけど腕はそれよりも遅れてしまうので、体の力をフルに使ってスイングする、なんて思っている人は腕が遅れて損をするようなスイングになっていることがほとんど。
体から腕に、腕からラケットに、と加速は乗り移っていかなければならないものですから、ここでトッププロのスイングは、そんなに前向きまで体を捻り戻していないし、打点ではしっかり腕と体の間が空けられている・・・つまり、体から腕→ラケットときちんと加速を繋いでこれている、ということがこの辺でわかるはずです。
体の方をねじ切るような派手な動きはないですね。腰はむしろ残っている方だと思います。胸や肩は腕を先行させていこうとする動きですから、それもまた素晴らしいバランスでなされているってことですね。
一般レベル、という自分の中ではどのくらいまでがアベレージとして、あるいはチャレンジとして成し得るレベルのショットが出るかは、そう言ったことを知っておいてトライすることで、引き上げられるようになるかもしれません。
最大最速の飛び方をする打ち方と、それがコートの中に入る打ち方との差を知っておくのも面白いかと思います。