あるプロテニスプレーヤーとの会話
「どんな練習をされるんですか?」
「特別な事は何もしてません、皆さんと同じような練習しかしてませんよ(笑)」
「じゃあ 我々とはやっぱり素質が違うんですね(笑)」
「そんなことありませんよ(笑) じゃあ、二つほど練習を紹介しますね。世界中で一番多くのプレーヤーが行っている練習は何だか分かりますか?それは半面ストレートのラリーです。これは簡単に言うと『自分の所に来たボールを正確に返球する』言わば基本中の基本で、野球に置き換えれば内野手の正面のノックと同じなんです。それをちょくちょくトンネルしたり、エラーしたり、ファーストに暴投したりしてたら話にならないでしょ?(確かに…反面ラリーでまずノータッチエースはありえんし…)だからノーミスをテーマに行うのです。」
「ノーミスですか?どれくらいやるんですか?」
「ノーミスで1時間は軽く超えます」
「1時間ですか?」
「もちろん、途中ミスでラリーは何度かは途切れます。但し私は一切ミスをしません、ラリーが途切れるのは全て相手のミスです。相手もそれ以上の方ばかりですから殆どミスはありませんが、0という人はまずいません」
「1時間ラリーして『一度もミスをしない人』と『殆どミスをしない人』との差がとてもデカイという事ですね」
「そういうことです(笑)、次の練習は2-1での一面ラリーです。これは与えられたエリアをしっかりカバーリングする練習で、相手は半面ですからしっかりコントロールしてきます。これも野球で言えばショートやセカンドの守備範囲で行うノックと同じです。この練習で最も重要なのは、練習の焦点がボケないこと、コートカバーリングの練習に徹するのです。体力や根気がなくなったり、このままだといずれミスにつながるからと言って攻めたら本来の練習の意味を成さなくなります。誤魔化さない事が大切です。ノックを受けてる最中にいきなりバットを持ってホームランはありえないでしょ(笑)」
「この練習中は、甘いボールが来ても絶対に攻めません、むしろ相手がガンガン攻めた方が練習になります。もちろん自分のボールの質は下げません、試合中では打たない中ロブみたいなボールでは全く意味がありませんから(笑)」
「確かにこの二つの練習は、どこのコートでもよく見かける練習ですね」
「はい、この二つの練習で私を超える選手は周りに一人もいませんでした、だから日本一になりました(笑)」
「説得力があって思わず『なるほど!』とうなづいちゃいましたが、決して簡単な事ではないですね(笑)」
「ところが、これだけでは世界には通用しません。この2-1練習がコートカバーだけの練習から攻撃的要素の練習にアップしないといけません。『チャンスボールが来たら攻撃してきちっと決める』という意味ではありません、そんなことは当たり前すぎる事なんです。劣勢や窮地に追い込まれた場面からでも攻めれなければいけません。どこからでもどんな状態からでもポイントを取る事が出来る選手が世界にはゴロゴロといるのです。私にはそれが難しかった、だから世界の壁は厚いと実感しました」
笑顔でさらっとと答えて頂きました。たしかにどこにでもある練習にもの凄い重みを感じました。
「どんな練習をするか」よりも「どうやって練習をやるか」を大切にし、「誰にでも出来ることを誰にも真似できないようにする」彼が長年、日本のトップに君臨していたのは当然の結果なんですね。
さて、もう誰の事かわかったかな?