日別アーカイブ: 2016年5月5日

手首を使うー握りによる制限

前回は、厚いグリップでの有用性、っていうタイトルだったのですが、その続きというか、どうしてそう考えたか、みたいな部分です。

硬式テニスは手首を使わないようにして打つ

と最初に聞いたことがあります。思いますけど、これは正しい。

これからテニスを始めようとするとしたら、その人にはそうやって教えた方がわかりやすい。

どういうことかっていえば、テニスの打ち方に、面の向きがきっかりわかるようにして打たないと不安定になる、ということを教えているわけですね。

だから、面の向きがわかるんなら、手首のことはあんまりもう言わなくっていい。経験者に向けては、より自然に打てて、パワフルにコントロール良く打つために、手首をがっつり固定しておいたら、その人にセンスがあったとしてもその上の技術をスポイルすることになると思います。

スイングする上で大事なのはボールをどうやって捉えたかわかる感覚的な部分で、手首を積極的に使うせいで不安定ならそれは固定しろって言った方がいい。

手首の力を使って打て、というような解釈をすると、おそらく上級技術の方から遠ざかることになります。

ボールにパワーを伝える運動の法則の逆を行く可能性が高いからです。

手首はしなやかにしておいて、自然とヘッドが走る位置でインパクトを迎えられるなら、スイングをある程度ゆっくり=インパクトの正確さを損ねない程度に=しても効率良くスイングの形が持っているパワーを利用できるようになります。

みんなそこが知りたいんじゃないのかな。

パワーを載せる、という解釈を、筋力を最大限に発揮できる…と勘違いしている人も多いような気がします。テニスの試合で、プロならグランドスラムで5時間や6時間なんていう試合をする可能性もあります。我々だって草トーに出れば、ワンセットマッチを1日に何試合もすることがありますから、一つのショットに筋力を最大限に…なんてやっていたら疲れちゃって勝てる試合も持ちこたえられなくなるんじゃないでしょうか。

体の中の、強い部分はどこか。パワーを担当するところ、また耐久性の強いところから動きを使うことができれば、疲労度は少なく、ボールに伝わるパワーは強く…それが効率良く打つ、ってことなんじゃないでしょうか。

 

今日はそんな中の、手首の話です。

手首は、どっちかといえば…いや、そんないわなくても、弱い方の器官です。例えば、手首をパタパタ扇ぐように使ってみましょう。何も持たずに。最大速で。

その次に、その手にラケットをもたせて、同じ速さで扱えますか?動作の回転半径が数倍になるので、それだけでも物理的に不可能なものなんですが、重さと長さに手首の力はあまり役に立たないことがわかります。

次に、腕を伸ばしてグッと力を入れて固定し、伸ばしっぱなしの状態で、肩の力で腕を振り回します。グルグルじゃなくて、ブンブンの方です。

手首でやるよりもだいぶ遅くしか動かせないと思います。

それで、ラケットを持って同じようにやってみましょう。手首の方ではガクッとスピードが落ちたと思いますが、もともとゆっくりしか振れなかったのもあって、今度はそんなにスピードが落ちないと思います。(もちろん、同じ速さで振るのは相当な筋力がいると思います)

これ、トルクの話だと思えばいいんですね。トルクの強いところは回転数は上がらないけどパワーがある=低いギヤだと坂道を登るのに適しているけどスピードは上がらないってこと。

手首は器用だから細かく素早く、その分パワーはない。

腕(いまの場合は肩から)は手首ほど器用ではないが、大きなものを動かすのに十分なパワーがあり、それで足りない場合は体幹−足腰が直接それを補います。

手首を使ってヘッドを早く動かす、ってことは、腕のスイングを止めて行うってことになるので、早く動かせる気がしてもそこにパワーは乗らないってことなんです。

ただし、しなやかにムチのようになると、可動域に差が出るために角速度が増し、当たりは強くなります。

グリップを薄く持ってしなやかな動きをすると、ヘッドは打球方向に動いてフラットサーブのような(骨と筋肉の都合でひねり動作があります)ボールをひっぱたく動きをします。

ただし、その動きはラケット面も大きく角度を変える動きになるので、ストロークには不向きですね。

そこで、厚いグリップに持ち替えよう、ってことなんです。

フォアハンドの握りはフォアハンドストローク専用、バックハンドはバックハンドに握りを変える必要も、当然出てきます。

さて前回のこの写真。

IMG_0495野球のバット持ってます。

バットは円柱なので、面の向きがありませんが、これがちゃんとボールを捉えていれば、やはり前に飛ぶ。ラケットに持ち替えれば、グリップは八角形になり、面の方向がわかりやすくなるし、向けないととんでもない方向に飛んでいっちゃうのはわかるので、ここで向きができるように持てばいい。

そうすると、握りが厚くなります。

自分のグリップの持ち方と同じならそれでいいし、同じじゃないからできない、なんてことはないと思います。それでプレーできるかどうかは別。慣れの問題で解決できる可能性だってあります。これはリクツですから。

さてこの形、ラケット面が地面に垂直になるように持っていたとしたら、ちゃんと前に飛ぶし、スイングをきちんとしてここの打点に到達したとしたら、振り抜き方向はどこになるでしょうか?

先ほど書いたような、フラットサーブのようにヘッドが前に抜けるでしょうか?

手首の形をよく見てください。これ以上前に行ったら痛そうです。

腕もほとんど伸ばして使っていますから、これ以上スイングはあまり前方向にはいかないですね。

ラケットは顔の前に円を描くように上がっていき、腕は左手の方向にそれに伴ってついていきます。肩は重さを逃がすために前に出る動作をして、フィニッシュは左肩の前あたりに右手がやってきて、ヘッドはその高さよりも低めに終わるでしょう。

いわゆる「ワイパースイング」的な動きになります。

ラケットの重みに手首が耐えきれないとしたら、握りか手首があまりにも弱くて、スイングの力を受け取れない=ボールをコントロールする筋力もない、ってことになります。そういう場合はスイングのスピードを遅くしましょう。

運動方向には、慣性の法則がはたらきますから、ヘッドは前に行きたがるかもしれません。それは、その前のスイング方向があっていないということ。

ラケットは飛ばしたい方向に振るものではなく、ボールに当たるように振ること。それと同時に飛ばしたい方向に面が向けられるようにしていくと、スイング方向は自ずと決まってきます。

厚く握ることで、動かせる方向に制限を持たせられるようになるので、薄いグリップでラケットを立てるなどして同じように面の向きを作ったとしても、スイングの入る方向が変わりますから、どうしても同じようなショットは打てないものです。

カテゴリー: 打ち方オタク | 投稿者ナガキヤスヒロ 10:24 | コメントをどうぞ