片手バックハンドの名手
テイクバックした位置はとても高い。
もちろん大きく引いている。
よく言われる話に
「大きく引くと振り遅れるからコンパクトに ・・・」
というのがある。
それなら
テイクバックの小さなプロがいてもよさそうなものなのに
見かけない。
片手バックを得意にしているプロに限って
高く、大きく引いているように思える。
何か理由があるはず。
今日はちょっとだけ
深遠な物理学の世界にお付き合いいただきたい。
と言っても、小学5年生レベルの理科
例の振り子だ。
振り子の簡単な理論をあげておく。
「支点から重心までの距離が一定ならば、振幅が変わっても周期は一定」
ということ。
つまり、上の絵で
B~Dのように小さく振れても
A~Eのように大きく振れても
同じ周期で振れるということ。
今回、この振り子で周期に2秒かかるということにしよう。
つまり片道は1秒。
テイクバック最上段からフィニッシュまでが1秒という設定だ。
片手バックの打点は
かなり前方なので
振り子の図でDの位置としよう。
テイクバックの位置を
Aにした場合とBにした場合で比べる。
同時に振り子の動きで振り出せば
周期が同じなので
最下点のCには、0.5秒後、同時に到着する。
その、0.5秒後に
ラケットは
小さく振った方は打点のDに到着
大きく振った方はフィニッシュのEまで到着する。
さて、D点に到着したのはどちらが早かっただろうか?
そしてよりすごいボールを打ったのは?
そう、大きく、高く、Aまで引いた、大振り選手の方なのだ。
もちろん、同時に振りはじめたということ。
振ることに腕の力を考えないということ
この前提があって成り立つ理論なのだが。
振り子をうまく利用できる選手にとっては
有効な理論だろうと思う。
「大きく高く引いた方が振り遅れない」
先日、理科系の某大学で
片手バックの男子学生を指導する機会があった。
振り子程度はもちろん理解しているわけで
以上の説明後
「だから、大きく高く、うまそうに構えてごらん」 と言ったら
1発目からドカンと1発
すさまじいバックハンドを打ち込んでいた。
もちろん
小さな構えと同じタイミングで振りはじめる必要があるわけで
早く構えはじめないと
振り遅れる前に
引き遅れるのでご用心。