例えば、レッスンでちょっとしたアドバイスを与えて、その生徒さんが急に感覚がよくなった、ということは結構よくあることなんです。コーチとしては嬉し異瞬間ですよね。もちろんアドバイスを受けた生徒さんも「よしわかった!」って思うと思うんです。
しかしですね。
それがそのレッスンで身につくかっていうとそんなことはない。
今までそうやってこなかったからできなかったんだし、それがちょっとしたことでも気づかないポイントだからコーチに指摘されるんだし、それと、そのちょっとしたことが重要だとは思っていなかったからやらなかったっていうことでもあります。
動作の大多数の要素は、「考えなくても自然にできる」ことで処理されていて、ボールをよく見ることとか、見ながらうまくラケットに当てられるようにすることで「ちゃんとできた」っていう処理がうまくいったことになるはずなんですね。
テニスの動作に限らず、テニスを趣味にしている人の日常生活の中でも、自然にできることは気をつけなくても大丈夫なことに分類されていることなので、気軽にできます。
それって、「習熟している」という動作なので、その動作自体に対してプレッシャーがないんですね。
今まで通り、いつも通りにやっていれば大丈夫、と自信のある動作なんです。
そこを変えることって、難しいことではないんですけど、新しく習熟しなおす必要があって、必ず時間がかかる、いえ、時間をかけて記憶したものを書き換える必要があるものなんだと思います。
それだけに今日書こうとしている部分は、いじる意味を感じづらいところでもありますし、そこを直されて一時できるようになったとしても、すぐに元に戻ってしまう可能性の高い部分です。
反応のしかた
がみなさん意識をあまりせずにやることで、そして人によって差の出るところでもあると思います。
ボールに追いつくのが遅い人
例えばダブルスの雁行陣で、ストレートにロブを上げられてチェンジするような場面。
意表を突かれたような感じでロブを追って、そしてそのロブに追いつけないで抜けちゃうような人がいます。
最初の反応が遅れたのでしょう。初級や初中級のクラスではよくあります。
しかしですね。シングルスコートの横幅って8.23mしかない。ダブルスコートいっぱいの横幅でも10.97mです。ラリーのポジションってシングルスラインの内側に立ってると思うし、入ってくるロブもシングルスラインのあたりでも結構いいコースじゃないでしょうか。
ロブ上がって、それが見えて、8m追いつかない?そんなわけないですよね。
なんどやっても追いつかない人に、じゃあボールと競争しようか、ってロブあげますよー、よーい、ドン!って走らせれば、大概の人はそんなに速く走らなくても大丈夫。ね、そんなに遠くないですよ、ってやっておくと今度からは大丈夫になります。
心理的に遠いんでしょうね。
でも、それだけじゃないんです。
こういう人の特徴は、走っている時にラケットを引いていない。
厳密に言い方を変えれば、肩と腰にスイングの準備ができていないんです。
走りながら、ラケットを引く力を入れるタイミングを計っている。
だから、必要以上に小股でちょこちょこ走る。これがまず追いつけない原因になることが多い。
追いつけたとしても…
そして、ラケットを引く勢いを利用してスイングしようとするんですが、引いて、力を入れて、振るっていうプロセスを踏んだ上でタイミングよくインパクトを合わせる、っていうのが結構合わないんですよね。
その人はよーくボールを見ながら走って合わせようとしているんですけど、追いついたあたりからやっと準備を始めるので、見ているこっちとしては危なっかしく見えます。
からの
フォアと、バックのテイクバック。
レディポジションの絵から、それぞれの脇の下の空間をイメージします。
フォアは右腕の下の、その空間に左手を、バックはその逆で右手を左腕の下の空間に、それぞれ入れようとするような形で、この写真のようになります。
こうすると、肩と腰が「入る」形になりやすい。
ラケットの動きを見ると、上から回していくようにしてサーキュラースイングの準備をしますが、そうやって腕の動きにイメージを置くようにすると、そこが合っていて、そしてできていたとしても腰からターンができなかったりします。
ジュニアの子に、よく球出しをするときに二つの打ち方をやってもらいます。
「最初に引き方を考えないで、走ってから間に合うように打ってみて!」
「この引き方(脇の下の空間に腕を入れる)をやってから走ってみて!」
どっちが打ちやすくなるかっていうと、100%後者の方で答えが返ってきます。
ジュニアの選手じゃなくて、初級のクラスでです。変にクセがついていないけどコーチとならラリーが出来る程度にボール慣れしている子。
特に両手打ちでバックハンドを打つような人は、右手が左手の内側に入るようにすることでコンパクトな形になり、スイングをすれば左手側(ラケットヘッド側)を右手側よりも大きくスイングすることになり、スイングのパワー伝達が良くなります。
左手を後ろに持っていく、ということでももちろん間違いではないしそうしないとラケットはうまく振れないかもしれませんが、サーキュラーの形にするなら、ラケットヘッドを最初に後ろに持っていかなくても大丈夫です。
どちらかというと大事なのは左腰を後ろに折るように準備すること。
そこで振り出す時のパワーが貯められていますから、腕だけを後ろに持っていくよりもよっぽど打ちやすくなります。
こんな感じ。こっから
この、上の写真みたいに右足から右腰のラインですね。この折り目がちゃんとできる人が結構少ないものなんです。
厳しいボールをあまりとらないでいると、準備の形に甘さが出て、手がリズムを取り始めます。手のリズムは、「勢いをつける」という動作を欲するので下半身に頼らずに腕だけでできそうという判断をしやすくなり、それが結局バウンドの読み違いやイレギュラーへの対応ができなくなり、打点を合わせづらくさせることになります。
下半身がこの写真のように最初に決まった形をすると、
①実は結構このまま走れる
②もう腕は打つ時までやることがない
③そうすると足を動かすしかない
ということになります。
足の動きは、飛んでくるボールの時間を計る、時計の秒針のような役割を持っていますから、最後の一歩がドンピシャで打点に合うように動くことができるようになります。
それも、器用な腕ではなく、その上にスイングをしなければならないところで時間を計って合わせていますから、全体の調和がとれた形でインパクトを迎えるように仕向けやすくなります。
そういう部分があって、心理的には心配な形(ボールを見ながら腕で合わせるがしづらくなる)と感じやすいのがこの形ですが、実際にフットワーク込みでやるようになる(ラリーやゲームを主体で考えるようになる)と、この形が必要であって、やらないとうまく打てないのがわかるようになると思います。