今はもうかなり普及しているポリエステル素材のストリングですが、ぼくが最初に自分のテニスショップをオープンした頃にはまだあまり馴染みがありませんでした。
ポリエステル素材のストリングはそれ以前からあったのですが、僕自身はまったく使ったことがなく噂として「硬くてすぐに弾力がなくなって飛ばなくなる」なんて散々な評価でした。
ところが店をオープンしてしばらくするとそんなポリエステル系ストリングを扱う代理店の営業の方が来て、その会社で販売しているポリエステル素材のストリングについてのレクチャーを受けました。
その話でかなり興味がわいたので、その営業マンがサンプルとして置いていかれたポリエステルストリングを生まれて初めて自分のラケットに張ってみました。
そしてコートに出てポリエステルストリングの初体験をしてみると・・・
はじめは何かとても違和感がしてとても馴染めないかも、なんて思ってしまったのにしばらく打ち続けていると変わりました。
ストリングのたわみが少ないので少し強めにしっかりと打たないとダメなことに気がついたので、ペースを上げて思い切り打ってみるとその飛び出し反発力?みたいな感じがナイロンとは全く違うことがわかってきたのでした。
これはどちらかというとボールが当たった部分だけがたわむナチュラルに近い打球感だなと思い、すっかり気に入ってしまいすぐに店に戻ってそのストリングとほかのいくつの品を注文しました。
あれから15年くらい経ちましたが、その後のポリエステルストリングの隆盛ぶりは目を見張るものがあります。
かつてはトッププロの60%近くが使っていたそれまでのナチュラルストリングが、どんどんポリエステルに変える選手が増えて今ではナチュラルとポリエステルの立場はまるで逆転しています。
ナチュラルストリングはほとんどの性能的にはおそらくどの素材より未だに優れているのでしょうが、ポリエステルに叶わない致命的なデメリットがあることでこのポリストリングの下克上での圧勝を許したと思われます。
それはナチュラルは耐久性がポリに劣るので、試合中にせっかくいい感じで打てていたのに切れてしまってリズムを崩す原因になってしまうからだというのです。
もちろんポリエステルでも切れることはありますが、その頻度はナチュラルに比べてずっと少なくて済みます。
だから激しいラリーを安定して打ち続けたい男子トッププロの世界では、たとえ打球感がナチュラルよりやや硬いことを差し引いても切れにくいメリットが勝っていることで、今やポリエステルが主流となったわけです。
でもポリエステルがやや硬めの素材だという認識も、シグナムプロの最新製品であるアウトブレークがほぼ払拭したのではないかと僕は考えています。
シグナムプロのポリプラズマ、そしてその後に出たファイヤーストームとポリエステルの概念を変えたと言っていいほどの柔らかくて高反発なストリングでした。
しかし、アウトブレークはさらに柔らかというか打球感が抜群に良くなっていて驚きます。
ポリエステルストリングの進化をもしもまだ知らないテニスプレーヤーの方はぜひとも試してみてください。
ただし、それなりにハードヒットしてもらわないとその素晴らしさがわかりにくいので思い切り打ってみて欲しいと思います