ラケットの引き方②

前回のこのブログで書いたことの捕捉というか、ウルトラマンくんではちょっと分かりづらい面もあったかなと思いましたので、捕捉も含めて書き直し、ということで「②」として投稿します。

スイングの力を効率よく、というのをテーマに、このところ実はシリーズ化していて、

「要素とか成分…」というタイトルで書いた頃のあたりから、考え方のもと、握りの重要性、手の中でラケットの感じ方がわかるなら手首の動き方、スイングのパワーの出る形としてトルクの説明…と進んできたわけです。

それで前回が、それだけ要素の絡みが出るのだから、ラケットを引くところから考えてみようという事で引き方の考察です。

今日はワタシがモデルになってます(笑)。

IMG_1545まずはレディポジションの形。

これを、こうしろってことを書いたんです。(ウルトラマンを使って)

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右脇の下のエリアを作るような格好になっています。この写真だけをみれば、イメージは右手で左腕を持ち上げるような形に――ですから、レディポジションで左手は右手よりも上にあるんですが、左腕を右腕のしたのエリアに入れるような、という説明の仕方になっています。

これって、

IMG_1558こういうことですよね。

右側の肩や腰を引く形になっているのが解ると思いますが、ラケットはまだそんなに後ろに引けていません。

「ラケットを引く」という言葉だと、先に手で持っているラケットを引く動作=手の動作というイメージが先に出やすいものです。というのは、手や腕は器用だし、気軽に動いてくれるから。

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こんな感じになります。これでもリズムが合っていて、振ればボールはちゃんと飛んでいきます。ラリーも十分に出来ますし、間違っているってことではありません。

ただ、対応が幅広くはならないと思います。なぜなら、肩と腰のターンが不十分だから。

下半身にタメをつくるように、膝を少し曲げても、腰のターンが少ないと

IMG_1549まあこんな感じですよね。

「肩が入る」っていう言葉がありますけど、具体的に肩がどこへどんなふうに入ると、何が起こってどういいことなのかが分かりづらい言葉ですよね。

この、手で引いている(ラケットをヘッドから引くような形)ような引き方だと、ラケットを振ることができる事は良いのですが、打っていく角度を変える(たとえば逆クロスに打つようなとき)に力を緩めるような握り方をして面の向きを変えないと出来ないと思います。それは、上半身のひねりこみが小さいから。

左手を斜め下側に入れるようにすると、左肩がぐっと前に出ます。それに伴って右側の腰が深く折れるようになります。

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こんな順序でぐうっと右腕を持ち上げるようにすると、腰と肩の位置がボールの新入方向に対して深くなり、見た目横向きになります。

この写真では下半身は写っていませんが、オープンスタンスになっています。

体重はひねることで自然と右足に乗る形になっているので、左足は自然に打点方向に踏み込ませてスクエアスタンスで打つことも、飛んでくるボールの勢いが強ければ踏み込まずにそのままオープンスタンスでも打つことが出来ます。要するに状況に応じて可変できる。

右ひじは後ろまで持っていけています。さらに言えばグリップの位置は、すぐにでも打点に入れられるように反転させる準備が出来ています。

スイングスタートでは、

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さっきのテイクバック完了(上側)から、スイングスタートはグリップが打点方向に向けて動き始めるのに、ひじ関節が内側に入ろうとしてきているので、下の写真の方が肘の位置が身体の近くになっています。

一度この形になってしまえば、ボールが打点に入ってくるのにあわせて振りだせばいいので、振り子の勢いを使えますから、打点を前にとって面の向きが正しく出てくるときにはかなりの加速を貰っているはずです。

ということは、二度引きなどの余計なリズムを作らなくてよくなります。下半身に力があるので、打点が前に取れるような厚めのグリップであれば、当たったボールを押し出すように体の回転を使うことも出来ます。

手の位置が先に後ろへ大きく引く必要もなく、速い球に先に手首を出せる形を作れば、振り遅れずに打点に合わせることもできるようになります。

 

バックハンドの方が説明が分かりやすい面もあるので、両手打ちバックハンドの例でも見てみましょう。

同じような理屈で、引き方はこんな。

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右手が、左腕を下から持ち上げるような感じ。右手が下側になるので、自然とテイクバックではヘッドがタテになるようになります。左腕は肘ごと持ち上げられて、身体から少し離れます。

そして、肩と腰が「入る」形になる。下へ押し下げるようになるために重心も落ちて安定させやすかったりもします。

このままスイングを追っていくと、

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右手の動きよりも左腕の動きの方が大きくなっていき、その分だけゆっくり振ってもトルクが強くなります。

引いた右腕の外側を左腕のスイングが通っていく為に、回転半径が大きくなっていくという事です。

右手は打点に早く入ることで位置を安定させ、左手はやや遅れて外側から大きく現れてパワーを与えつつ押し出せるようになるので、スイングの形態も単に一例ではありますが、ひとつの「理屈に合った形」であると言えます。

 

フォアでも書いたようにヘッドの方から引くのもパターンのひとつですが、比較してみましょう。

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こんな形になります。このパターン、セリーナ・ウイリアムズがこんな感じじゃないでしょうか。

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世界のトップがこの引き方をしているところからしても、決して悪いとか間違いってわけじゃない。

トップ選手は、腕の動き方以前に、さきに腰と肩のターンがなされているので、スイングがしっかり力強く始められるのここの形であれば、同じようにスイングにパワーを載せることが出来ます。

要するに重要なのはインパクトであって、そこに上手くボールが入ってきて、「つかんで、はなすように」して軌道に乗せる様なイメージと合った感触で打てるかどうかです。

このセリーナのように打てていて上手な人には少しも文句はありません。

ただコーチとしてみていて、ラケットを引いていても腰と肩のターンがしっかりしている人はかなり稀です。

走るとほどけるような恰好だったり、ボールが速いと思うと早めに開いていってターンでつくるべきタメが無くなってしまったりすることがほとんど。

この、『下側から振り子を作る』ような引き方でやってみて、というアドバイスで姿勢が落ち着いて、そしてスイングのパワーを効率よく伝えられるようになったことも事実です。

それは、先に「肩が入る」形を作ることで打つ前に約束の形になっておくという事が出来るからだともいえると思います。

要素は要素であって、最重要項目もあれば、軽んじていても大きな影響がないような要素もある。

それがどんな高さのどんな勢いのボールでも対応が効く、という事かどうかの分かれ目になるのが小さな要素の方かもしれないんですね。

 

中級クラスでショットのスピードの出る男性のお客さんから、「こないだコーチの最上級クラスみたけど、あのスピードでなんでミスしないで打ち合えるのかわからない」という感想を聞いたことがありました。

その方もかなりのパワフルショットが打てる方なんですが、やはり続けて打てないし、重要なポイントでは思い切り打ったら入らないかも、という不安から打てなくなるそうです。

しかしこちらとしては、ショットのアベレージスピードが高いのは常に全力のショットを成功させているわけじゃなくて、その人にそう見えるのはアベレージであって無理はしていないから打てるんですよね。

思い切り力を入れてスイングすればスピードは出るでしょうが、距離を狙うのは難しいと思います。

上級者は、相手のショットを上手く受け止めて、反発のパワーもラケットから必要以上に逃がすことなく活かしているので、軽々と打っているようでも速い球に出来るという事ですね。

冒頭にも書きましたが、

ショットの成否はほとんどがインパクトの瞬間になされるものであり、

打点でのラケットの動きを把握するのには握りから得られる感覚が必要で、

ラケットの動きというのは手首の稼働範囲内であって、

手首の関節は二軸なので、あるていどの制約を持っているから約束通りに動くことになっていて、

ボールにパワーを持たせたいと言っても速く振ればいいというわけではなく、

腕を動かす肩がギヤの役目を持っているとすれば回転半径が大きい方がトルクは大きいことと、

大きいスイングは遅くなるのでラケットに当てるのが容易になる事と、

肘の曲げ伸ばしや手首のひねり方向などで打点にうまく面が合うようにすることでより強いスイングにすることが出来るということ、

さらにそこへ狙いをしっかりするには時間的な余裕が欲しいために引き方から考えた方がよいだろう

 

 

という事へ繋げてここまで書いてきました。

言葉で説明するとだいぶ多い文章量になるってことがわかりました(笑)。動かしてみれば、1秒足らずの動作です。一つひとつ、要素を掴むことで、全体のパフォーマンス向上になるかと思います。

 

すぐに100点満点のスイングやインパクトが出来る様にはなりません。自然にできる事はそこがセンスの良さになりますから、自然にできる事+これは足りなかったかな、という要素が組み合わさっていくことで上達の足掛かりになればと思います。

 


カテゴリー: 打ち方オタク | 投稿者ナガキヤスヒロ 13:54 | コメントをどうぞ